これまでアートディレクションという言葉にはあまり馴染みがないまま人生の大半を過ごしてきたわたしですが、お悩みはよく分かります。かく言うわたしも同じ悩みを持ち続けてきた一人だからです。 わたしの場合はさる大学の工学部の出身ですが、製品開発部門を希望して応募し在学中に就職が内定したさる中規模企業では、わたしが趣味で書き溜めていたスケッチやレンダリングにむしろ目をつけたようでした。その企業はわたしにさるデザインスクールに併行入学するようにと勧めてくれ、学費を支給し入学手続までしてくれました。時代が、そして企業が優れたデザインを求めていたからでした。 つまり、これだけの経歴の付け焼刃デザイナーというわけです。ですが、入社後すぐデザインを任されたわけではありませんでした。大卒後はその企業の設計室に配属され、やがて営業所勤務に回され、製品とその製造販売についての知識を十分に得たのち、3年を経てやっとハ