世界で5月末現在、600万人以上が感染し、約36万8000人の死者が出ている中国発「武漢ウイルス」について、宗教界、特にキリスト教会からの発言がほぼ皆無だ。世界各地で多くの人々が苦しみ、亡くなった家人を葬ることすらできな状況下にいる時、「心の世界」のケアを担当するキリスト教会指導者は沈黙しているのだ。 信者たちが知りたいのは、「多くの人が新型コロナの犠牲となって苦しみ、死んでいる時、神は何を考え、何をしているのか」だが、その返答は宗教家たちからは聞かれない。辛辣な人なら、「宗教家の看板を下ろし、他の職業を探すほうがいいのではないか」ということになってしまう。 近代の精神分析学の道を開いたジークムント・フロイト(1856~1939年)は愛娘ソフィーを伝染病のスペイン風邪で亡くしている。その時の体験、苦悩を後日、「運命の、意味のない野蛮な行為」と評した。現代人は神に距離を置く人が増えたが、信者