今週のメルマガのテーマは「流動性の罠」。その原因を金融政策に求める愚かな政治家が後を絶たないが、本書はその最大の原因を貯蓄超過に求めている。これは日本経済の慢性疾患だが、最近は家計貯蓄率が下がるのを相殺するように企業が貯蓄超過になっている。 このようなISバランスの不均衡が長期にわたって続くことは、普通はあまりみられない。開放経済のもとでは、貯蓄超過は経常黒字(輸出超過)に等しくなるはずだが、為替レートがずっと円高だったため輸出が拡大せず、慢性的な需要不足が続いてきた。 貯蓄超過の原因を、著者は生産年齢人口の減少と生産性上昇率の低下に求める。労働人口の減少によって資本が過剰になり、生産性(TFP)の低迷で資本収益率が低下したため、90年代以降、民間投資が減少した。その結果、企業が貯蓄超過になるという世界にもまれな現象が起こったのだ。これがゼロ金利(流動性の罠)の続く原因で、これを改善しない