人体を伝送路に見立てて,音楽や画像,セキュリティー関連のデータを伝送する人体通信技術。この技術のデータ伝送速度や消費電力,通信の安定度,コストを大幅に改善する手法を東京大学 生産技術研究所 機械・生体系部門特任准教授の滝口清昭氏が開発した。データ伝送速度は,理論的には既存技術の10倍程度の190Mビット/秒が得られる上に,消費電力も10数分の1に抑えられる。 滝口氏は実現できた理由として、人体通信技術の原理を明らかにしたことを挙げる。「これまで開発されてきた人体通信技術は原理を十分に把握できていなかったため,必要以上の電力を人体に印加していた」(同氏)。大きな電力を人体に印加するとデータ送信機から三つの成分の電磁波が放出される。距離の1乗で減衰する放射界と,2乗で減衰する誘導電磁界,3乗で減衰する準静電界である。 このうち,放射界と誘導電磁界が通信性能を劣化させる原因となっていた。これらは