稲葉振一郎『経済学という教養』 御会葬の皆様へ 日本の不景気。これはいったい誰のせいなんだ。「誰のせいでもありません」。我が社はいかに頑張るべきか。「いえ頑張れることは何もありません」。そりゃ困るよ。誰かがどこかでズルしてるから景気が悪いんだろう、そいつらをやっつけなきゃ。そのために我が社だって痛みに耐えているんだ。そうじゃなきゃ困るよ! 「なぜ困るのですか」。……はあ?「誰も悪くなくて、あなたも痛い思いなどしなくていいなら、それに越したことはないじゃありませんか」。たしかにそうなのだ、べつに困ったり悩んだりしなくていいのだ。ところがなぜか我々はそれでは気が収まらない。犯人を探したがり、自らを痛めつけたがる。なぜだろう。やはり小泉総理の「構造改革!」のスローガンに引っ張られているのか。ところが、話をさらにややこしくしている黒幕がいるらしい。それは意外や意外、マルクス主義なのだった。稲葉振一