ページを閉じて、これは悲しみの話だと思った。 もっと仲良くしたかった、こう言えばよかった、でも出来なかった。という悲しみの話だ。 一度きりの大泉の話 作者:萩尾望都 河出書房新社 Amazon 私は、萩尾望都氏の熱狂的なファンである。 偶然、叔父の蔵書していた「ポーの一族」を手に取って読んだ14歳の夏から(そう、あのときわたしは14歳だった!)ずっと、私は萩尾作品に焦がれ、読み続けてきた。 忘れもしない2009年の年末。新宿で萩尾望都原画展とサイン会をやるというので、私は当時住んでいた新潟から夜行バスで上京した。雪の降る新潟から、夜明け前の凍てつく新宿へ向かった。ほぼ徹夜で整理券の列に並んだが、ちっとも眠くなかった。運良く整理券が手に入り、サイン会の列に並ぶことができた。感激のあまり卒倒しそうだった。 あの!萩尾望都が!目の前に居て、動いている!! 萩尾氏は色紙にサインをさらさらと書いて、