【北京・井出晋平】王子製紙が関連した工場排水管計画に反対する中国江蘇省南通市の抗議デモにより、市当局が計画の白紙撤回に追い込まれた。その背景には、環境意識に対する中国国民の意識の高まりを当局が無視できなくなっているという実情がある。中国は経済成長優先の立場から環境対策を後回しにしてきた。だが近年は環境問題への懸念から各地で工場の立地をめぐる抗議デモが頻発。この問題の放置は政府批判につながりかねず、当局も対応に苦慮している。 中国では環境対策が不十分な企業が多く、環境汚染が切実な問題になっている。環境問題をめぐる住民のデモも相次いでおり、▽11年8月に遼寧省大連市で化学工場の移転を求めるデモが起き、市政府は即日、工場移転を約束した▽今月、四川省で金属工場の建設に反対する住民の大規模な抗議活動が発生し、当局がプロジェクトの断念に追い込まれた−−などの経緯がある。 当局が住民の要望を受け入れるよ