彦根東の松林基之部長が、ベンチから、ネクストバッターズサークルにいる6番・高内希に「振れてないんだから、バットを短く持て!」と指示を出すと、高内が困惑したような表情を浮かべた。 その理由は、あとでわかった。 慶応に1-2と逆転されて迎えた8回表。2アウト一、三塁の好機に、高内が右打席に立つ。この試合、完投したエースの増居翔太が「練習でぜんぜん当たっていないので、期待していなかった」と笑う絶不調のバッターだった。 ところが、高内はその日、ある武器を手にしていた。長さ80センチの「極短バット」だ。高校生だと、通常は83センチか84センチのバットを使うので、極端に短い。大会の1カ月半前、あるメーカーが甲子園用にと持ってきたバットだった。 インコースを攻めてくる投手に有効ではないかと1本だけしのばせていたバットだったが、あまりに短く、使おうとする選手はいなかった。 このときは不思議なほど体に馴染ん
![彦根東の「幸運の極短80cmバット」。3ランを生んだ甲子園用の秘蔵の1本。(中村計)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/85c632a2c709df3889eb33b1130bf96982066958/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fnumber.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2F2%2F7%2F-%2Fimg_27d10c7e37e6049a001d7ce13192094b137366.jpg)