北九州市に“100億円のお宝”があるのをご存じだろうか。市立美術館(同市戸畑区)所蔵のジャンミシェル・バスキア作「消防士」。バスキアの作品は近年価格が上昇しており、同館が35年前に375万円で購入したこの油彩画は、今や「オークションに出せば100億円を超える」との専門家の声もある。同館の審美眼が光った結果だが、購入の経緯には、予算に限りがある公立の美術館ならではの工夫があった。 バスキアは米国人で、1981年デビュー。ポップカルチャーの要素を取り込んだ即興的作風で知られる。88年に27歳で不慮の死を遂げたこともあり、カリスマ的な人気を誇る。2年前、ネット衣料品通販大手「ZOZO(ゾゾ)」の前沢友作社長(当時)が、無題の作品を1億1050万ドルで落札し、話題を集めた。 「消防士」は83年作で、縦164・8センチ、横230センチ。バスキアと交際していた女性のけんかを火消し役の消防士が止めに来て