地図に思いを馳せるーー残念ながら私はそんなロマンチストではなく、地図も全く当てにできない方向音痴だ。しかし、宝の地図や、新大陸と聞けば、やはりワクワクせずにはいられない。古代の人々にとって、地図とはそのようなものであった。南北アメリカが初めて地図に登場した時代、アフリカ大陸の内陸部の状態が分からず空白だった時代、それぞれの時代を生きた人間が持つ世界観や野望が地図には克明に表れている。本書は、時代を遡り、地図にまつわるあらゆる物語を記した力作である。 アレクサンドリア大王の治世、アレクサンドリア図書館は「世界中の写本をすべて揃え、人類のこれまでの知識を結集させようという大望」を抱くほどの巨大図書館だった。そこで世界中から集まった地理情報を地図としてまとめあげたのが、紀元前149年、エラストテネスによる世界地図だ。彼は自分で緯線・経線を導入し、科学的原理にもとづく手法を用いて地球の円周を限りな