実話をもとにチベット問題を真正面から捉えた衝撃作『風の馬』が今春より公開される。本作に寄稿されたチベット・コラムの連載スタート 西蔵ツワン氏 チベットの魂 文:西蔵ツワン (武蔵台病院 副院長、埼玉医科大学 消化器肝臓内科 非常勤講師) 私は1952年にチベット第二の都市シガツェで生まれました。父はチベットでとれる岩塩をインドやネパールへ運び米と交換する、いわゆる「塩の道」の交易を仕事としていました。ところが59年の動乱で、人民解放軍はチベットの指導者たちを次々と逮捕していき、私たちの平穏な生活はあっという間に崩れていきました。その頃、仕事でインドに滞在していた父は、危険を感じひとりインドに亡命しました。それから三年間、私は中国政府がつくった小学校に通いました。そこで学んだ中国共産党の教育は、“洗脳”ともいえるものでした。今では信じられませんが、幼かった当時の私はダライ・ラマ法王を“反逆者