1枚の漫画は、時に長文のコラムより雄弁に政治の本質に光を当てる。そして漫画などのイメージは文字と違い、機械的なネット検閲に引っかかりにくい。言論や表現に対して強圧的な政権にとって意外とやっかいな存在だ。 「変態トウガラシ(変態辣椒)」という奇妙なペンネームの中国人漫画家が最近、日本と中国で注目を浴びている。本名は王立銘、41歳。性的にアブノーマルなわけではなく、いたって普通の常識人だ(「変態」はこの場合、中国語で「激辛」の意味になる)。王氏が最近、頻繁に日本のニュースで取り上げられているのは、中国の習近平政権による言論や表現への締め付けと、改善の兆しがまだ見えない日中関係という2つの政治的な嵐に巻き込まれ、この夏から日本への「亡命」を余儀なくされているからだ。 王氏は文化大革命のさなかの73年、下放政策によって上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、