世界保健機関への拠出金停止を発表するなど、自国の状況回復優先で指導力が低下する米国。新型コロナの終息には国際連携が不可欠だ WHOへの拠出金を停止した米国国境を越える感染症には、国境を越える対応が不可欠である。しかし新型コロナウイルスを巡っては、国家ごとの対応や国家間対立が目立ち、また世界保健機関(WHO)への批判が相次いでいる。従来、感染症への対応においてリーダーシップを発揮してきたアメリカは、中国との対立姿勢をむき出しにし、イランへの制裁を継続している。トランプ米大統領はWHOが「あまりにも政治的で、中国寄りである」と批判、当機関への拠出金を停止すると発表した。G7外相会合や国連安全保障理事会も、米中の対立を反映して、共同声明や決議を採択できない状況が続いている。 本稿では、感染症をめぐる保健協力の現状と展望について、過去の経験を踏まえつつ、また現状の国際政治を読み解きつつ考察していき