本書は昭和28(1953)年から45(1970)年まで、17年間にわたって出版された全145巻の『建築写真文庫』から、商業・公共建築に分類される79巻を選び、再編集してまとめたものである。古書店の店頭やウェブサイトで、見かけては買っているうちに、少しずつ手元に集まってきた『建築写真文庫』。その全巻のほとんどが、実はたったひとりの人間によって取材、撮影、編集、デザインされたものであること、それも発行元内部ではなく外部の、さらには文筆業でも写真家でもなく、建築家であり数寄屋研究家である、北尾春道という人物によって手がけられたものであることを知ったとき、口はばったいようだが、偉大な先輩がここにいた!と思わずにいられなかった。 建築家・数寄屋研究者にして、稀代の趣味人であったひとりの人間によって取材、撮影、編集までてがけられた建築写真文庫には、本書に掲載されたものだけで300件以上、全145巻を通