「音楽を携帯する」というまったく新しい文化を世界中に浸透させた「ウォークマン」という商品は、まさにソニーのイノベーション(技術革新)の真骨頂だった。ところが、意外にも発売前夜の社内では懐疑的な声の方が大きかったという。 開発に携わり、みずから「プロジェクト・マネージャー」を名乗り出た盛田昭夫氏(当時ソニー会長)が、社会現象を引き起こすまでの道のりを綴っていた。 出典:「文藝春秋」1981年4月号 ◆ ◆ ◆ 私共の商品名を表題にするのは、配慮すべきであるが、あえてこの名を出した。というのも既に、昨年5月号の本誌で、椎名誠氏が「35歳のウォークマン戦記」と題する一文を書いておられて、ウォークマンの流行を社会現象の一つとして批評しておられるので、この変な機械の発案者として、今さら、宣伝でもないとお許し願い、これにまつわる小話を認(したた)めることにした。 一昨年の早春に、当社の井深さんが「他人

