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ブックマーク / www.aozora.gr.jp (127)

  • 芥川龍之介 あばばばば

    保吉(やすきち)はずつと以前からこの店の主人を見知つてゐる。 ずつと以前から、――或はあの海軍の学校へ赴任した当日だつたかも知れない。彼はふとこの店へマツチを一つ買ひにはひつた。店には小さい飾り窓があり、窓の中には大将旗を掲げた軍艦三笠(みかさ)の模型のまはりにキユラソオの壜だのココアの罐だの干(ほ)し葡萄(ぶだう)の箱だのが並べてある。が、軒先に「たばこ」と抜いた赤塗りの看板が出てゐるから、勿論マツチも売らない筈はない。彼は店を覗(のぞ)きこみながら、「マツチを一つくれ給へ」と云つた。店先には高い勘定台(かんぢやうだい)の後ろに若い眇(すがめ)の男が一人、つまらなさうに佇(たたず)んでゐる。それが彼の顔を見ると、算盤(そろばん)を竪(たて)に構へたまま、にこりともせずに返事をした。 「これをお持ちなさい。生憎(あいにく)マツチを切らしましたから。」 お持ちなさいと云ふのは煙草に添へる一番

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    ext3 2008/09/17
    あばばばばってw
  • 図書カード:ドグラ・マグラ

    名・杉山泰道。右翼の大物・杉山茂丸の子として生まれ、はじめ農園経営に従事。僧侶、新聞記者などを経て、作家に。死の前年に書かれた大作『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇味と幻想性の色濃い作風で日文学にユニークな地歩を占める。 「夢野久作」

    図書カード:ドグラ・マグラ
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    ext3 2007/12/24
    しかし、WEB公開されたからといってこの分量を読むの大変だな。目も疲れるから本で読んだほうがマシという……/読んダけど精神に異じょウなんか来たさなカったヨ
  • 大空魔艦 (海野 十三)

    におけるSFの始祖となった小説家。名は佐野昌一。徳島市の医家に生まれ、早稲田大学理工科で電気工学を専攻。逓信省電気試験所に勤務するかたわら、1928(昭和3)年、「新青年」に『電気風呂の怪死事件』と名付けた探偵小説を発表して小説家としてデビュー。以降、探偵小説、科学小説、加えて少年小説にも数多くの作品を残した。太平洋戦争中、軍事科学小説を量産し、海軍報道班員として従軍した海野は、敗戦に大きな衝撃を受ける。敗戦翌年の1946(昭和21)年2月、盟友小栗虫太郎の死が追い打ちをかけ、海野は戦後を失意の内に過ごす。筆名の読みは、「うんのじゅうざ」、「うんのじゅうぞう」の二通りが流布している。丘丘十郎(おか・きゅうじゅうろう)名でも作品を残し、名では電気関係の解説書を執筆している。 「海野十三」

    大空魔艦 (海野 十三)
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    ext3 2007/08/05
    「だいくうまかん」ではなく「たいくうまかん」
  • 海野十三 十八時の音楽浴

    1 太陽の下では、地球が黄昏れていた。 その黄昏れゆく地帯の直下にある彼の国では、ちょうど十八時のタイム・シグナルがおごそかに百万人の住民の心臓をゆすぶりはじめた。 「ほう、十八時だ」 「十八時の音楽浴だ」 「さあ誰も皆、遅れないように早く座席についた!」 アリシア区では博士コハクと男学員ペンとそして女学員バラの三人がいるきりだった。タイム・シグナルを耳にするより早く、三人は扉を開いて青い廊下にとびだした。 その青廊下には銀色に光る太い金属パイプを螺旋形に曲げて作ってある座席が遠くまで並んでいた。 三人は自分たちの名前が書かれてある座席の上に、それぞれ、ピョンピョンと飛びのった。それをきっかけのように、天井に三つの黄色い円窓があいて、その中から黄色い風のシャワーが三人の頭上に落ちてきた。すがすがしい風のシャワーだった。 三人は黙々として、音楽浴のはじまるのを待った。 博士コハクは中年の男性

  • 宮本百合子 婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?

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    ext3 2007/01/21
  • 芥川龍之介 或恋愛小説 ――或は「恋愛は至上なり」――

    ある婦人雑誌社の面会室。 主筆 でっぷり肥(ふと)った四(し)十前後の紳士(しんし)。 堀川保吉(ほりかわやすきち) 主筆の肥っているだけに痩(や)せた上にも痩せて見える三十前後の、――ちょっと一口には形容出来ない。が、とにかく紳士と呼ぶのに躊躇(ちゅうちょ)することだけは事実である。 主筆 今度は一つうちの雑誌に小説を書いては頂けないでしょうか? どうもこの頃は読者も高級になっていますし、在来の恋愛小説には満足しないようになっていますから、……もっと深い人間性に根ざした、真面目(まじめ)な恋愛小説を書いて頂きたいのです。 保吉 それは書きますよ。実はこの頃婦人雑誌に書きたいと思っている小説があるのです。 主筆 そうですか? それは結構です。もし書いて頂ければ、大いに新聞に広告しますよ。「堀川氏の筆に成れる、哀婉(あいえん)極(きわま)りなき恋愛小説」とか何とか広告しますよ。 保吉 「哀婉

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    ext3 2007/01/21
    厨川
  • 青空文庫 - 梶井基次郎 「桜の樹の下には」

    桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている! これは信じていいことなんだよ。何故(なぜ)って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。 どうして俺が毎晩家へ帰って来る道で、俺の部屋の数ある道具のうちの、選(よ)りに選ってちっぽけな薄っぺらいもの、安全剃刀の刃なんぞが、千里眼のように思い浮かんで来るのか――おまえはそれがわからないと言ったが――そして俺にもやはりそれがわからないのだが――それもこれもやっぱり同じようなことにちがいない。 いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った独楽(こま)が完全な静止に澄むように、また、音楽の上