自宅のある階でエレベータを降りようとしてそれに気づいて指が痛くなるほど強く「閉じる」ボタンを押した。見るな、見るな、こちらに顔を向けるな。エレベータが一階に降りても恐怖は消えず、あとも見ずに走った。 LINEでつかまった女友達に通話を頼んで、言う。ユキコがマンションの部屋の前で待ってるんだけど。いや別れた、ていうか、そもそも、つきあってない、いずれにしてももう会えないって言ったんだけど、オートロックって役に立たないね、ドアの外から動かなかったらどうしよう。 女友達は言う。管理会社に連絡しなよ。管理人さんか警備員さんに声かけてもらったらいいと思う。 僕は少しむっとする。こいつ、わかってねえな、と思う。そして言い聞かせる。そんなことしてユキコの親や会社が知ることになったらどうするんだ。かわいそうじゃないか。もちろん僕だっておおごとにはしたくない。 女友達は言う。そしたら誰かに頼んでユキコがその