日本国憲法の制定・公布は昭和21年11月3日、その施行が翌22年の5月3日で、筆者の中学1年から2年にかけての事であつた。中学初年級の少年にとつてさへ、この憲法の成立事情のいかがはしさは直感を以て認識できた。当時多く新憲法と呼ばれたそれは、米国軍隊の軍事占領・監視の下に、連合国軍総司令部(GHQ)の指令により、大日本帝国憲法を排除する形で作られ、採択を強制されたものだといふ事実は、子供の眼にもごまかし様(よう)もなく明白に見えてゐたからである。 ≪軍の保有認めぬ規定に衝撃≫ 殊に衝撃だつたのは、陸海軍が解散せしめられ、今後国家として軍の保有を認めないといふ規定が憲法にある事だつた。軍隊さへ健在ならば、いつの日か敗戦の屈辱に対する復讐(ふくしゅう)はできると考へてゐた軍国少年にとつて、この条項に対する憤激は深刻だつた。長じて大学に進学し、初歩的段階ながら憲法制定経過についての独学を始めるや直