青果店を営む両親は、高校進学に絶対反対だった。担任の女性教師が膝詰め談判を試みても、頑として受け入れない。まもなく2人は、おたふく風邪で寝込んでしまう。大量に買い込んだ野菜をさばくのに人手が必要だった。早速駆けつけた教師が黙々と手伝う姿に、両親はついに折れた。 ▼ちょうどその頃、30代半ばだった教師の結婚も決まる。関東学院大学が「心にのこる最高の先生」をテーマに募った、エッセーのひとつだ。筆者は父親の言葉が忘れられない。「生徒と心身一体となって教職に立ち向かってる先生を世の中の男性が、ほっておくはずがない」。 ▼このような教師と生徒、そしてその親の間の信頼関係が、失われて久しい。それどころか、埼玉県の市立小学校に勤務する40代の女性教諭が、担任している児童の保護者から、度重なるクレームを受けて不眠症に陥ったとして、慰謝料を求める訴訟を起こし世間を驚かせた。 ▼きのう、さいたま地裁熊谷支部は