話の途中に、相手がスマホをいじりはじめる。 いまや、どこにでもある光景だ。 それについて怒る人もいるし、知らないふりをして話を続ける人もいるし、同じように自分もスマホをいじりはじめる人もいる。 パッと見た感じは、相手の目を見ていない(あるいは明らかに話を聞いていない)こと以外に、それほど大きな事件が起こっているわけではない。 けれども実はスマホを使って、「その場とは全く関係のない世界とやりとりをしている」という状況は、これまでの人類史上はなかった経験だ。 今までは、女性を口説きながら、恋人と別れて傷心の友人を励ますことはできなかった。 子供といっしょに公園で遊びながら、小学校の同級生との再会を懐かしむことはできなかった。 ぼくらは「いま、ここ」にいながらにして、スマホやパソコンの向こうから様々な役割を求められていて、それを同時にこなそうとしている。 そうやってみんなが同じ空間にいながらにし