その昔 篠突く雨が 迅く叩き 我が内の 音に軽やか 磁器の音が ある男 ふらり手に取り 品定め 土塊に 同化と為して 紛れ込み 一度目は 正しく知れぬ 茶碗かな 濯ぎ口 深泥を掃い 水捌けて 野されども 腹も身の内 瑕僅なし 硝子戸の 一角押して 棚の中 窈窕な 細君気付き あなや声 新しく 銭を払いて 手中にか 女問い かぶりを振りて 拾い主 捨て物に 宝見出し 付喪神 我が憶え 一度の使い あらざりき 数え年 齢五十年 半生を やもめ成る 流転万物 共に在り 我が主 朝夕餉にて 愛用し 三食の 白米盛るは 己なり ―――――――――――――――――――――――――――― 穿つ茶器 誉れを受けて 時重ね 寵愛を 他所に移らず 注がれる これほどの 喜び知らぬ 物として しまわれて 苔生し朽ちて 終と散る 覚悟あり 懐刀 真似事よ 男との ひねもす日々に 妻倒れ 病臥し 番い残すは 現世に
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く