3年後に小惑星が衝突して滅亡してしまう運命の地球上で生きる人々の物語。小説の上手さを嫌味の感じないレベルまで昇華させて、死をあからさまにならない程度にちらつかせる技量は名人芸の域。“いつもの伊坂”っぽさも控えめで、分かりやす過ぎる悪も今回は登場しない。個人的に作者の作品で引っかかっていた部分が払拭されていて文句のつけようが無い仕上がりになっている。 本を読む時、○○だから〜と先入観を持って読むことは絶対にしないように心がけているが、正直言って伊坂幸太郎の作品については穿った読み方をしていた部分があることは否定できない。というのも、いつも伊坂幸太郎の作品からは「余裕」が感じられるからだ。確かに彼は、ウィットに富んだユーモアを爽やかに読ませるし、展開もスムーズ。キャラクタ造形や展開(特に導入)は非常に上手い。でも、ある程度小説技巧に慣れてしまうと、そういった上手さじゃ心は動かされなくなる。ある
お好み焼き屋を開こうと思ったが挫折し、「犬探し」専門の調査事務所を開いた紺屋。 しかし、開業初日に舞い込んできた二つの依頼はどちらも犬にはまったく関係ないものだった・・・ 今まで読んだ米澤穂信の著作の中で、一番作者の文章が無理なく響いてくるようなこざっぱりとしたハードボイルドミステリー。 「さよなら妖精」の主人公も古典部シリーズの奉太郎もどこか厭世めいたスタイルを持つキャラクターだったが、 青春小説にはどうもそういったキャラクターはミスマッチな印象があった。 「犬はどこだ」の主人公、紺屋も都会で挫折して戻ってきた“敗残者”であり、基本的にやる気がなくシニカルな姿勢を崩さない男である。 しかし、こと高校生を離れ探偵(本人は違うと否定しているが)を描くとするならば、作者の持ち味である感情を抑えた文章が非常に合うのだ。 物語は調査事務所の所長である紺屋と、“探偵”に憧れを持ち手伝いを申し出るハン
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