ハイブリッドな体 「多重人格」があるならば「多重身体」もあるのではないか? 障害を持つ人と関わっていると、ふとそんな突拍子もない考えが浮かびます。 たとえばある脳性まひの男性。彼は、自分の体では立つことすらままならないにもかかわらず、ダンスが好きで、見て楽しむばかりか他人にきわめて的確な振り付けの指示を出すことができます。つまり、自分ができない動作について、人に教えることができるのです。彼の中には「高速で手足を回転させるヒップホップダンサー」がいるように思えてなりません。 あるいは、目が見えなくなって10年ほど経つ女性。彼女はいつも、紙と鉛筆を持ち歩いています。話しながらメモをとる習慣があるのです。話の内容を図解したり、時系列に沿って出来事を列挙するのですが、自分では見えないにもかかわらず、「その方が頭の中が整理される」と彼女は言います。書いているあいだ、指先で筆跡を確認することはありませ