子どものころ、すきなニュースのトピックは「亡命」だった。テレビでどこかの国の人が亡命したというニュースが流れると、食事中でもいったん箸を置いて画面を見ていた。洪水や台風などの自然災害にもぐっときたが、いちばんクールなのはやっぱり亡命だ。わたしがちいさかったころは、冷戦構造の影響もあり、亡命はよく報道されるニュースだった。その、命からがらで逃げだす感じが実にいいと、子どものわたしはおもっていた。 一度くらいは、ボーメイしたいなー。そうすればきっと、亡命先では誰かがわたしを保護し、あたたかいスープ的なものを飲ませてくれたり、親切な言葉をかけてくれるはずだ。たいへんでしたね、とか、もう安心ですよ、などと言ってくれる。いいなあとおもった。やってみたいよねー、ボーメイ。などと、わりとカジュアルにかんがえていた子どものわたしだが、具体的に亡命がどういう行為なのかはわかっていなかった。まずは定義づけが必