明和・安永(1764~81)のころ、江戸で小便組という一種の詐欺が流行した。 若くて美貌の女が、妾奉公を望んでいる。 たまたま、妾を囲いたいと願っていた大店の主人などは、女をひと目見るや、その容色に迷い、高額の前金を出して、契約を結ぶ。 別宅を借り受け、同衾を始める。ところが、女には思いがけない悪癖があった。なんと、毎晩、寝小便をするのだ。 旦那も、これには閉口する。 「これは、あたくしの病でございます。しないようにしようとしているのですが、どうしても治りません」 妾がさめざめと泣きながら謝ると、旦那としても叱ったり、責めたりもできなかった。 病気とあれば、仕方がない。 けっきょく、旦那は暇を出す。 旦那の側からの契約破棄だし、同情もあるため、前金で渡した金を返せとはいいにくい。数年契約だったはずが、ほんの半月や、数日で終わってしまい、金は戻らない。旦那としては大損である