東京都区部の集合住宅。近隣には保育園や公園もあり、夕方になると子どもの声も聞こえてくる。指定された場所に着くと、高齢の男性がこっちこっちと手を振っていた。吉岡政光さん、103歳だ。 「もう年ですから、なかなか足が思うように動かないんですよね」 照れたように笑い、ゆっくりと部屋に戻る。リビングの一角には九七式艦上攻撃機の模型が飾ってあった。 毎年12月8日が来ると、吉岡さんは古い記憶を思い出す。80年前の1941年、日本海軍が行ったアメリカ・ハワイ州の真珠湾軍港への奇襲攻撃。吉岡さんは攻撃に参加した艦載機(航空母艦に搭載される航空機)の搭乗員だった。長年、自分の子どもたちにもそのことは話してこなかった。 「負けた戦争ですし、仲間も死んでいますし、恥ずかしい思いがあったんですかね。でも、考えてみたら、あの時のことを忘れられても困る。それで話すことにしたんです」 1918(大正7)年、石川県に生