アデノシン三リン酸(ATP)は生命活動に必要不可欠なエネルギーの担い手だ。細胞内では、ATPがアデノシン二リン酸(ATP)と無機リン酸(Pi)に加水分解されるときに放出されるエネルギーが使われる。今回、東北大学大学院理学研究科高橋英明准教授らの研究グループが、そのATPエネルギーの詳細な分子メカニズムを明らかにした。 今回研究グループは、多数のCPU(コンピュータ中央処理装置)を並列につないで計算するシステムを独自に開発。ATPやADPについて高速の量子力学シミュレーションを可能とした。さらに大阪大学の松林伸幸教授(基礎工学研究科)が開発した高精度高速の水和自由エネルギー計算手法を融合し、水中のATP加水分解反応のエネルギーを高い精度で計算することに成功した。 計算によると、ATPの解離に伴う電子エネルギーの大きな低下と溶質の水和自由エネルギーの大きな上昇が、水という媒体の中で相互に精妙に