デリヘル(デリバリー型ヘルス)は性風俗の一形態で、デリヘルドライバーはその名のとおり、デリヘル嬢を客の自宅や宿泊しているホテルに派遣(デリバリー)する仕事だ。 ライターの東良美季(とうらみき)さんはそんな男たちに興味をもち、「東京の闇を駆け抜ける者たち」に話を聞いた。そのなかに「バイオリン」という章がある[*1]。 *1 東良美季『デリヘルドライバー』駒草出版 中学生の全国大会で優勝 風見隼人(かざみはやと)の親は千葉県庁の職員をしていた共働きの夫婦で、船橋市の公営団地で育った。 母親は若い頃音楽大学に通っていて、自宅にはアップライトのピアノがあった。母の弾くピアノを子守り歌に育ったからか、風見は3歳のとき、テレビでオーケストラの演奏を見て第一バイオリン奏者を指差し、「ボク、あれをやってみたい」といったという。 喜んだ母親が町内にあったバイオリン教室に息子を通わせると、「この子は私のところ