「覚醒」という言葉は魅力的な響きを持つ。人の進化形として「ニュータイプ」という概念を提示し続けるアニメ「機動戦士ガンダム」のファンの心に、「覚醒」への憧れが潜んでいることは疑いようがない。かつてはオウム真理教の信者も、修行で覚醒したとする自分にニュータイプの姿を重ねていたという。 今年三月に公開された劇場版「機動戦士Z(ゼータ)ガンダムIII 星の鼓動は愛」で、昭和五十四年に始まったガンダムの一連のシリーズが一つの区切りを迎えた。第一作の登場人物が活躍する物語が計七本の映画にまとまったのと、ニュータイプの概念に作者の手で変更が加えられたという二つの意味においてである。 後者は、もしオウム信者が十年前にこの映画を見る機会があったら、相当困りそうな変更だ。人の意思を感知して、物事をあるがままに理解できるのがニュータイプの能力だが、それに加えて、「身近な人を大切にできる」という要素も加わった