イチローは引退会見で1時間以上にわたり記者の質問に答えた。そのやり取りは画面越しからでも緊張感が伝わった。 「人生訓」を引き出したいから。 ただ、テレビ局にも言い分もあるはず。ワイドショーなどの視聴者は全員が野球に興味があるわけではない。なのでいかにイチローから「人生訓」「いい話」を引き出すかが勝負なのだと思う。それが仕事だと最初から割り切っていたはずだ。 あと、冗舌なイチローからいい話を引き出したい。自分の質問を認められたい。そんな空気も画面越しに伝わってきた。時にはその張り切り方が空回りする瞬間もあった。 会見で最も悲惨だったのは某週刊誌記者の質問だった。「メジャーデビューもアスレチックス戦で、あのときの投手は……」と語りだしたはいいがイチローに投手名の違いを指摘される。ああ……。 結局そのあと「今日の打席で1年目のゲームを思い出したりしたか」と問うとイチローは、 「長い質問に対して大