頼む、この胸の苦しみを、エンドレスな煩悩を、底無しの不安を、その明晰な頭脳と誠実な対応で困難を切り抜け、その全てを解放してほしい。。。 今日、オフィスのトイレに入るのは8度目になる。他に人がいれば個室に、いなければ洗面台に向かう。鏡で見るのは元々色白の顔が更に青白くなり、死体のような血の気のない顔。胸の中がゆっくりとしかし重く掻き回され続けるような異様な気持ちの悪さ。 自分の表情が明らかにおかしいのは自分で分かっている。その表情を真っ直ぐにPCスクリーンに向け自然に見えるようにするのが精一杯だ。オフィスの同僚に自分の異変を気がつかれたくない。ましてや常に吐き気を催しているなどと。 異変を感じたのは月曜日の夜だった。 ダンこと団忍は、今回は遅れてしまった毎週日曜夜のルーティーンを、自宅の机で開始しようとしていた。愛用のエルゴノミクスチェアに深く腰掛けると、最新型iPhoneをスタンドに立て、