ブックマーク / jtsutsui.hatenablog.com (12)

  • 「公共性」ノート:再分配か承認か - 社会学者の研究メモ

    某出版企画で「公共性(公共圏)」や「市民社会」について書くことになりました。いろいろ復習しなきゃならなくなりましたので、ノートを作っていきます。(ひっそり作っていくと飽きるのでいくつか記事にします。) 第一弾はナンシー・フレイザーandアクセル・ホネット。 再配分か承認か?―政治・哲学論争 (叢書・ウニベルシタス) 作者: ナンシーフレイザー,アクセルホネット,Nancy Fraser,Axel Honneth,加藤泰史出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 2012/10メディア: 単行購入: 2人 クリック: 30回この商品を含むブログ (10件) を見る 上記の2章、ホネット「承認としての再配分」の読書メモ。 第1節 社会的不正の経験の現象学について ホネットがいうには、フレイザーは社会運動を批判理論の拠り所にする際、「社会運動は再分配を主張するものから、アイデンティティ・ポリ

    「公共性」ノート:再分配か承認か - 社会学者の研究メモ
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    fugufugu 2015/07/23
  • 日本的働き方における「フレキシビリティ」の矛盾 - 社会学者の研究メモ

    シノドスに「男女雇用機会均等法では「共働き」を実現できない」という記事を掲載させていただいた。そこでは、育児期の制度的手当をし、採用・昇進(昇格)に際しての男女差別を排することで(従来の)男性的働き方に女性を引き入れようとしても、結果的には女性の「活躍」は実現されず、性別分業は維持されるだろうと書いた。 その背景にある働き方の特徴についてはそれほど詳しく書いていなかったので、ここで補足しておく。 日的な働き方の特徴の一つに、社内で人員をフレキシブルに配置できる、というものがある。職務内容や勤務地がはっきりと決められていないため、内部労働市場が活発になり、経営者は事業の縮小や新規展開にあわせて人員を柔軟に配置換えすることができる、ということである。1970年代以降の経済成長率の低下に際して欧米諸国では大量失業が生じたのに日では失業率(特に若年者失業率)がそれほど高まらなかったのは、余剰労

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    fugufugu 2014/07/19
  • 関学大学院の講義で話したこと:社会学における計量分析の位置づけ - 社会学者の研究メモ

    鈴木謙介先生の紹介で、関西学院大学院社会学研究科で4週にわたって講義を行った。さいわい受講者に恵まれ、ヘタな講義にもかかわらず、そこそこ実りのある授業ができたのではないかと思う。この記事では、そこで話をしたことを備忘録代わりに軽くまとめておこう。あわせて、講義内ではうまく伝えられなかったことについての補足の意味もある。 1講 実証=調査ではないこと 私の役割は、計量分析の視点から生活保障について講義をすることだった。そこで、最初に計量分析とはなんぞやというところからはじめた。そのなかでも冒頭で話をしたのは、「実証=調査」ではない、ということだった。 しばしば社会学では実証というとすぐに(質的にしろ量的にしろ)「社会調査」だと考えられてしまう。しかし、より広い科学の世界を見渡してみれば、少なくない分野において調査データは「二流市民」扱いなのだ、ということを説明した。因果関係をより正確に特定し

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    fugufugu 2013/06/26
  • マルチレベル分析の使い方 - 社会学者の研究メモ

    社会学研究者やその近接分野の研究者から、いわゆる「マルチレベル分析」についてよく似た質問をよく受けるようになったので、簡単な見解を示しておくことにする。 心理学や社会学でマルチレベル分析と呼ばれている分析方法は、基的には変量/混合効果モデルを使った分析のことを指している。この分析モデルの使い道には、以下のようなものがある。 変量効果の推定 観察値がクラスターごとにまとまっているときの誤差の調整 分散成分の推定を通じた要因の探索 1(変量=個体効果の推定)は社会科学ではほとんど用いられない。その理由はすでに別のところ(説明と選抜:統計学における2つの「関心」)に書いた。反復テストや信頼性の検定など、測定に関するさまざまな研究の蓄積はもちろんがあるが、個体効果の推定それ自体を最終的な目的とすることは社会科学ではあまりないだろう。 2(誤差の補正)については説明を省くが、OLS回帰分析における

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    fugufugu 2013/03/15
  • アンペイドワークについて - 社会学者の研究メモ

    (2012.10.8追記:お勧め文献を追加しました。) 概念整理 社会学分野でも、ケア労働やアンペイドワークについて多くの理論的・概念的考察がなされてきた。しかし文献のなかには、概念的な混乱のために無駄な議論をしているものも多い。この記事では、アンペイドワークをめぐる概念整理をして、それを踏まえてアンペイドワークについてどのような研究プログラムがありうるのかを検討する。 最大の混乱は、unpaidを「対価(見返り)として貨幣が得られない」という状態を指すのか、あるいはそもそも「(いかなるかたちでも)対価がない」状態を指すのかが、しばしば区別されていないことにある。「無償労働としての家事」と言うときは、それが賃労働ではないということが強調さているはずだ。他方でunpaid workを「不払い労働」という意味で使う場合、対価がない無償の奉仕という意味で言葉を用いているのだと思われる。 「対価と

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    fugufugu 2012/09/26
  • 計量分析を使った論文の構成ガイド - 社会学者の研究メモ

    研究者個々人の好みや分野によって異なるところもあるが、標準的・テキストブック的には、以下のようになるだろう。 イントロダクション 先行研究の紹介と問い・仮説の設定 分析 結論/討議/インプリケーション この「分析」のパートについては、社会学界隈では下記のように教えることが多いような気がする。 データと変数の説明 使用する変数の基統計量 丁寧な記述的分析(クロス表やグラフ) モデルを使った推定 確かに社会学の論文では、モデルの推定をする前にたくさんのクロス表を掲載していることがある。そうしておいて、最後に「クロス表から得られた以上の結果を重回帰分析で検証してみる」のである。かつては私もそのようにしていたのだが、自分としてはこの方針で論文を書くことはなくなった。 はたして以上のような分析の手順は、意味のある手順であるといえるだろうか? モデル推定で擬似相関であることが分かるような変数の効果に

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    fugufugu 2012/08/22
  • 図(だけ)で説明する回帰分析 - 社会学者の研究メモ

    分かっているようで意外と分かっていないのが回帰分析です。回帰分析の考え方をできるだけ図だけで説明した資料を作りましたので、適宜ご参照ください。 「(ほぼ)図(だけ)で説明する回帰分析」(PDF) 主な内容は、以下のとおりです。 説明変数と撹乱項の相関の理解 予測値の信頼区間をプロットすることの重要性の理解 「変数をコントロールする」ということで曖昧に理解されている内容の理解

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    fugufugu 2012/03/16
  • 第二回連携研究会を終えて - 社会学者の研究メモ

    「人文学・社会科学における質的研究と量的研究の連携の可能性」第二回研究会もなかなか盛り上がりました。結局前回と同程度の参加(30名弱)がありました。参加者の方々、ありがとうございました。 研究会の趣旨には、実は「連携」を模索すると言うよりは、お互いの立ち位置を確認し、不用意な誤解を解き、互いに適切に評価しあうための語彙を模索する、という側面があります。その点でもある程度進展があったと思います。 最初は前田泰樹さん(東海大学)の報告(「行為の記述・経験の記述:質的研究とエスノメソドロジー」)でした。前田さんはいわゆる「ウィトゲンシュタイン派エスノメソドロジー」の立場から研究されていますが、そのことを知らなくても十分に研究(分析)の方針が伝わるようなやり方で報告していただきました。すでに当事者によって「記述のもとで理解」されている振る舞いを、必要なレベルの精度で再記述するというEMの研究方針

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    fugufugu 2012/02/29
  • 説明と選抜:統計学における2つの「関心」 - 社会学者の研究メモ

    社会学者や経済学者にとって、統計学をベースにした計量分析とは、何かを因果的に説明する道具であるという側面がある。賃金を学歴で説明するというとき、それは他の条件が同じで学歴が変化したときの賃金の変化量を推定する、という意味である。 (記述的な分析手法を含めて)統計学を学ぶ人のほとんどは、この「説明(explanation)」のためにそれを学んでいるのだと考えられる。 しかし統計学には、それとは全く異なった目的が託されることもある。それは「選抜(selection)」である。統計学を選抜に使うというのは、それをアカデミックに活用している研究者からみても、実はあまり馴染みのない考え方である。というのも、あとで詳しく述べるが、選抜は学問的説明とは相容れない考え方だからだ。 しかし選抜は、実践家においては大いに意味がある考え方である。「限られた回数の耐久力テストの結果から、真に優れた個体を選抜する」

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    fugufugu 2012/01/27
  • 社会学における「理論の実証」 - 社会学者の研究メモ

    (以下は二〜三カ月前に書いたメモですが、寝かせておいてもあまり意味がなさそうだし、稲葉先生もシノドスの論考を公開されたのでいいタイミングだと思うのもあり、ちょっと手を入れた上で公開します。) 社会学の問いの特徴 私は、学部のゼミでは(大学院でも基的にはそうだが)、いわゆる「標準的な研究プロセス」に従って個人研究をするように指導している。標準的な研究プロセスとは、問いを立て、それに対する理論仮説をデータ(質的・量的)で検証するという手続である。 その際、しばしば「社会学的な問いの立て方」というものを説明する必要が出てくることがある。学生は基的に社会学の授業をいくつか受けているので、そうしたほうが効率がよいからである。それに、意外に「社会学的な問いの立て方」を説明するのは簡単なのだ。 それは、「注目する現象/人間行動が、性別、年齢、学歴で違いを持つかどうかをまず考えてみたら?」というもので

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    fugufugu 2011/10/17
  • (非計量さん向けの)統計学の話:バイアス編 - 社会学者の研究メモ

    (今回はですます調でいく。いや行きます。) まずは、私の後輩や知人たちが書いたです。↓ エスノメソドロジー―人びとの実践から学ぶ (ワードマップ) 作者: 前田泰樹,水川喜文,岡田光弘出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2007/08/03メディア: 単行(ソフトカバー)購入: 6人 クリック: 1,065回この商品を含むブログ (99件) を見る このなかに、次のような文章があります。 どのような研究に対しても、その主張の妥当性を、そこで採用されている方法と無関係に論じることはできません。だから、「事例の数」やそこから得られる「一般性」を問う前にまず、ある研究が明らかにしようとしていることが、そもそも事例の数によって保証される種類のものなのかどうかということ自体を考えなくてはなりません。 このことは言ってみれば「当然」のことなのですが、研究者の間ではあまり考えぬかれていない重要な論点

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    fugufugu 2011/05/12
  • 質的研究と量的研究について - 社会学者の研究メモ

    とある出版企画でそういうお話を書かなければいけないので、社会学におけるいわゆる「質的研究」と「量的研究」の区別についてメモを書いておく。 結論から言うと、次のように考えるとミスリーディングである。つまり、「まずある<理論>があって、それを<実証>する手段として質的な研究と量的な研究がある」という考えである。こういう考え方は、混乱のもとであるから、避けたほうがよい。多くの社会調査論のテキストでは調査手段の選択として「質的調査」と「量的調査」を選択することがあるかのように書かれているが、少々説明不足である。そうではなく、さしあたり量的研究とその他のタイプの研究が、量的研究とどのような関係にあるのか、と考えたほうがスッキリする。 分野外の研究者からすれば見えにくいが、実際には量的研究と言っても様々である。が、現状からして、「複数のパラメータを含むモデルを構築し、それをデータに当てはめて統計学的推

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    fugufugu 2011/05/10
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