男は店先の路上にしゃがみ込み、たばこをふかしていた。猫背でひどくやせている。フィルターをつまむ指の爪は長く伸び、黒い汚れがたまっていた。待ち合わせをした人だろうか。多分、違う。なぜかそう思い、男の前を通り過ぎ、約束していたファミリーレストランへと入った。しかし、やや遅れて現れたのは、まさにその男性だった。 障害年金と生活保護費で暮らしている ケンさん(56歳、仮名)。東京都内の私大を卒業し、何度か仕事を変えた後、介護関連会社で人事・経理の職に就いた。年収は800万円ほどあったが、繁忙期は明け方3時、4時ごろまでの残業が当たり前。40代の頃、ストレスからアルコール依存症と双極性障害を発症して失業した。その後は、ローンが残っていた持ち家を手放し、離婚、自己破産――。1人娘は親族の養子となった。現在、仕事はなく、障害年金と生活保護で暮らしている。 テーブルに着いたケンさんはやおら、元妻への批判を