鬼平犯科帳、剣客商売、仕掛人・藤枝梅安など、戦後を代表する時代小説・歴史小説作家・池波正太郎。 実際に作品を読んだことがなくとも、映像化した作品でふれたことがある方も多いはずだ。 その池波正太郎は、美食家としても名高い。 彼が訪れた名店・老舗は数知れず、東京をはじめ、京都や近江、奈良など、全国に点在している。 そのなかでも、14~15歳の頃から通い続けていたのが、銀座にある老舗洋食店『煉瓦亭』だ。 明治28年創業。明治・大正・昭和・平成と4代に渡り、今もなお多くの常連客から親しまれている。 昭和56年に発行された著書『散歩のとき何か食べたくなって』で、煉瓦亭を以下のように称えている。 少年のそのころからなじんだ店で、いまでも食べに行きつづけている店といえば、資生堂に天國、それに洋食の〔煉瓦亭〕だろう。(中略)銀座の老舗中の老舗だ。 池波正太郎が愛して止まなかった食の遺産。 今回は、彼の回想