「経済白書」から「経済財政白書」に名称が変わって、政府の経済政策の宣伝媒体となっていた「経済財政白書」は、昨年からかつての「経済白書」のような経済分析中心のスタイルに戻ってきている。最新の分析手法とデータを用いて多方面から日本経済の現状が分析されている。白書を読めば、現在の日本経済の状況がよく理解できる。ただし、手法も含めて完全に理解できるのは、経済学の専門的訓練を受けたものに限られるかもしれない。 第一章では、景気回復が長期間続いている背景とデフレ脱却の可能性が議論されている。金利の予測や金利上昇の経済への影響が分析されていることは、白書の執筆時期が日銀のゼロ金利解除の前であったことを考えると興味深く、タイムリーな分析になっている。 景気の回復の理由の一つは、白書で明らかにされているようにデフレにもかかわらず賃金の下方硬直性がなくなってきたことだ。しかし、賃金の下方硬直性が本当になくなっ