(前回「寂れ行く地に残された人々~『米国の夕張』ヤングスタウン」から読む) ヤングスタウンに滞在した2日目も、雪が降ったり止んだりの空模様だった。気温も前日と変わらず、摂氏マイナス8度。 この日、私はダウンタウンの北側に向かい、前日に出会ったセキュリティーの女性がゴーストタウンだと語ったエリアを、小一時間ほどドライブした。 確かに、朽ちた家々が残っているだけだった。古びて塗料の剥げ落ちた建物が並ぶ様は、昨年訪ねたハリケーン・カトリーナの跡地、ルイジアナ州ニューオーリンズに似ている。だが、ニューオーリンズは至るところで復旧作業が続いており、住居を建て直すハンマーを打つ音や、地面を掘る音が聞こえてくるのに対し、ヤングスタウンはただ静寂に包まれているだけだ。 カメラを構えて近辺を撮影していると、ふいに呼び止められた。 「何をしているんだい?」 振り返ると、デニムのシャツに黒いジャケットを羽織った