里佳子さんがふたつ年上の夫と結婚して三年になる。子どもができたので退職するという。おめでたい話だ。けれど里佳子さんに限っては少なからぬ数の社員が個人的にざわついており、不審がった後輩が私のところに理由を尋ねに来るほどなのだった。彼は訊いた。なんで家庭に入るとまずいみたいな感じなんですか。あの人旦那さんラブだし別によくないですか。そうとも里佳子さんは旦那さんラブだよと私はこたえた。だから私たちはどうしたらいいかわからない。 最初に里佳子さんとその夫の問題に気づいたのは、自分の結婚式の二次会に彼らを招待した社員だった。里佳子さんたちはまだ新婚だった。ふたりのそばを通ったときに聞こえたせりふに彼女はひやりとした。これだから頭の悪い女はいやなんだ。 あとは里佳子さん本人から、少しずつ聞き出した。里佳子さんは愚痴を言わない。ただ彼女が当たり前だと思っている話が、当たり前でない内容をふくんでいる。里佳