ひとはたいてい、「思い入れ」から物語に出逢って、触れる。 のちにそれが好きになるものなのか、あるいは嫌いになるものなのか、それは触れたその瞬間にはわからない。けれどたとえば、本屋で或る一冊の本を手にしたその時、ひらいたそのページにもしも自分が見た光景があったり、いま実際に自分が生きている場所が描かれていたり、感じたことのある感情が記されていたら、そのひらいたページを無意識のうちに目が追い、吸い込まれるようにそのシーンの続きを読み、そのままレジに持っていって買って、帰宅してベッドに寝転んであらためて最初から読んでその物語にどっぷり浸かってしまう、そうしてラストまで読んだあともその物語の余韻からいつまでも覚めることができない。と、そんなことがあるかもしれない。というよりきっと誰しもそんな経験があるだろうし、もしなかったとしてもそんな自分を想像することはむずかしくない。 物語のなかに自分を感じる