「野毛」との出会いが、私の日常を変えた 地下通路を抜けると、私の心はおやじに戻る。 かれこれ16年ほど前、私は1歳と2歳の子どもを連れてシングルマザーになった。 幸せとは言い難い結婚生活から解放され、ささやかながら幸せに満ちた3人暮らし。ただ、たいしたキャリアもなく、幼すぎる子を持つひとり親は、何枚履歴書を書いても正社員として迎え入れてくれる会社とは出会えず、結局4つのアルバイトを掛け持ちしながら子どもを育てる日々が続いていた。 働くか、子どもと過ごすか──その2つだけで構成された毎日。 束の間の休息は、子どもたちの寝顔を見ながら飲む1本の缶ビール。切り詰めた生活の中で、自分に与えた唯一の贅沢品だった。 そんな生活が4年目に突入したある日、私の日常を変える出来事が起きる。 JR桜木町駅の南側に広がる飲み屋街、「野毛」との出会いだ。それから12年、私を支え続けた野毛という街について話したいと