2009年の『週刊読書人』以来3年ぶりに、『文學界』「新人小説月評」で文芸時評みたいなことをやったので(2012年7月号〜12月号)、気がついたことのメモなどを。半年程度なので俯瞰的な傾向もへったくれもないのですけれど、複数の作家が、同じような手法を採用しているのが目についたのでその件について。一言でいうと、それは、人称あるいは視点の問題である。一人称と三人称の交換可能性を追求した作品、あるいは一人称と三人称は交換可能であるという前提で書かれた作品、もしくは一人称を三人称のごとく客体化する作品、はたまた一人称が分裂したりする作品という感じだろうか。少なくとも3年前の09年には、こうした試みはほとんど見られなかったから、ここ数年で開発・採用が進んできた技法であるといってよいと思う。作品にそって具体的に見てみよう。顕著なのは、山下澄人「トゥンブクトゥ」(『文學界』12月号)と滝口悠生「わたしの