たぶん、これは人生における「波紋」の物語なのだろう。『言の葉の庭』は新宿御苑の池に降る雨の波紋を映すところから始まる。美しい光の反射は新海誠監督の得意分野だが、本作に置いて反射は波紋という形になり、象徴的な現象として扱われている。本編でいちばん驚かされたのはクライマックス、マンションに反射する激しいの水紋だった。フローリングへ、扉へ、壁へ。水の映す場所に制限はないとでも言うかのような、水の底に沈んだイメージを「本当の気持ち」がある場所へと誘い、盛り上がりをみせるドラマと重ねた演出で、ああこれは15歳という多感な少年へ、27歳という社会に出た大人の女性へ、それぞれに「波紋」をもたらす祝福された時間の映画なのだとはっきりわかった。新海誠監督のテーマは一貫している。何処か届かないものへ手を伸ばすこと、美しいものを追い続けること。連なる時間と距離。年齢という歩んだ時間の違いを距離に、恋愛の断絶感に