遠嶋 康徳 (国立環境研究所) たしかに、私たちは呼吸によって二酸化炭素(CO2)を吐き出しています。しかし、そのCO2は食物として体内に取り込んだ有機物を分解しエネルギーを取り出す過程で最終的に排出されるものであり、その食物の起源をたどってゆくと植物が光合成によって大気中のCO2と水から作りだした有機物にたどりつきます。つまり、私たちが呼吸によって吐き出すCO2はもともと大気中に存在したものなのです。ですから、いくら呼吸をしても大気中のCO2を増やしも減らしもしません。このように、自然の炭素循環の中での出来事は、大気中のCO2濃度にほとんど影響しません。私たちが呼吸以外で排出するCO2が問題なのです。 1増加する大気中の二酸化炭素(CO2)濃度 最初に、現時点でわかっている大気中CO2の収支関係をおさらいしておきましょう。産業革命以降、われわれ人類は石炭や石油、天然ガスといった化石燃料の