戦前から戦中にかけて日本の近代数学は、後進国としては驚異的に発展する。それをわざわざ取り上げて、ブラバキ派のデュドネが同時期のポーランド数学と並べているくらいだ。 伊藤清の確率微分方程式もその一つだけど、金融工学での応用がさらに功績と重要性と名声を加速した。それ以前はストラトノビッチと並列して、どちらかというとIto積分はオマケみたいに扱われていたのだ。 しばらくは確率微分方程式の使いみちとしてはブラウン運動が最たるものだった。そのブラウン運動での数学的な定式化は伊藤型かストラトノビッチ型だったというわけだ。 結果として応用分野の発展からして、伊藤型のほうが普遍性があったということになる。ストラトノビッチより先駆的で、しかも応用範囲が広いのだ。 ただし、正規分布を前提とした方法だということは記憶しておくべきであろう。栄えある第一回ガウス賞を氏が受賞したのもガウス分布=正規分布が縁を結んでい