熊本地震のあと、県庁そばの中心部一帯は、一時ゴーストタウン化した。地名でいうと熊本県熊本市中央区神水。神の水と書いて「くわみず」と読む。ここで生まれ育った黒岩裕樹さんは、まちに少しでも前向きな空気を生み出せたらと、自宅のお風呂を公衆浴場にすることを思い立つ。2020年8月、熊本市でおよそ20年ぶりに新しい銭湯「神水公衆浴場」が誕生した。 自宅のお風呂を銭湯に まちづくりの世界では「人と人のつながり」や「コミュニティ」が大事といったことがよく言われる。だがコワーキングスペースなど交流施設としてつくられた場所が、いつまでたっても閑散としている…なんて話も多い。それはそうだ。場所だけ人工的に用意されても、そう都合よく人と人の関係が生まれるものではないからだ。 その点、銭湯は少し前提が違っている。誰でもお風呂には日常的に入るので、まず必然性がある。リピート性もある。常連さん同士、言葉を交わすうちに
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