1995年、渋谷区宇田川町にHEADZの事務所を構えた佐々木敦は言う。「1990年代を通して、世界で一番進んでいたレコード文化の国であった日本の中の、最も進んだスポットが渋谷だった」。タワーレコードやHMVといった大型ショップがにぎわう一方、宇田川町にはクラブミュージック系のレコードショップが密集し、雑居ビルの中にはマニアックなリスナーが夜な夜な通うアヴァンギャルド系のショップも点在した1990年代の渋谷。ライブハウスやクラブも含め、そこを行きかう若者たちが最先端の音楽文化を作り上げていた。 それから25年が経ち、インターネットの浸透は情報のあり方を質的に変え、再開発によって街の風景は大きく様変わりした。きらびやかな建物が増え、渋谷を訪れる層は広がったように思うが、かつての文化的な熱量は拡散してしまった印象も拭えない。そして、そんな最中での新型コロナウイルス感染症の拡大。都市のあり方が改め