記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。 夢を見た。 遥か遠く、ここではないどこかの、静かで穏やかな黄昏の夢を。 ◆◇◆ 夕暮れの帰り道。 周囲には麦の海が広がっていた。 大粒の実を宿す穂が涼しい風と一緒に、音を立てて揺れている。西の彼方に沈もうとする日の光によって黄金色に輝く光景は、まるで御伽噺の中で語られる天界のようだった。 辺りをぼんやりと眺めていたベルは、そこでふと、隣にいる人物を見上げる。 目が覚めるような美しい女性だ。 髪は灰色で、長い。 彼女は薄汚いと嫌っているようだが、ベルは好きだった。 瞼は常に閉じられている。 目を開けずどうして生活できるのだろうといつも不思議に思っているが、彼女が言うには「瞼を開けることですら疲れる」のだそうだ。 身に纏う漆黒のドレスはこんな山奥の中にあって、酷く異彩を放っている。
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