文/末近浩太(立命館大学教授) 「21世紀最大の人道危機」と言われるシリア「内戦」――。 2011年の「アラブの春」の一環として始まったこの紛争も今年の3月で丸5年を迎え、既に総人口約2100万人の半数以上が国内外への避難を余儀なくされ、27万とも47万とも推計される人びとが命を落としている。 「内戦」の泥沼化、そして、あらゆる「普遍的価値」を蹂躙する過激派組織「イスラーム国(IS)」の出現。今日のシリアには、「アラブの春」後の中東の「絶望」を象徴する終末的風景が広がっている。 シリアでは、なぜ「アラブの春」が「内戦」になってしまったのか。その「内戦」は、なぜ泥沼化したのか。なぜISは生まれたのか。そして、シリアはどこに向かおうとしているのか。 民主化運動から革命闘争へ シリアは、1946年のフランスの植民地支配から独立後、宗教に基づかない近代西洋的な国民国家を範とする国造りが行われた。