『ニッポンの書評』の著者・豊﨑由美は、冒頭に作家・ヴァージニア・ウルフの言葉を引き、自らをガター&スタンプ屋と呼ぶ。 ガターとは切り抜き、スタンプとは鑑定。つまり、本の内容を紹介し、読むべきかどうかを判定する人というほどの意味だ。書評家などと気どっても、所詮やってることはそれだけじゃないか、そのせいで小説の売り上げが落ちて作家がどんなに迷惑をこうむっているか……と、ヴァージニア・ウルフは書評家に皮肉を込めてそう呼んだのだが、著者は「そうですけど何か?」と開き直る。 ガターとスタンプにもプロのワザがあるんですよ、書評を書くことですごい世界を紹介できる人がいるんですよ、でもプロにもいろいろいるんですよ……と、話は転がってゆく。 「ニッポンの書評」の暗黙のルール 本書は、書評の現場で15年間もキッタハッタの真剣勝負を挑んでいる著者が我が身を削りながら書いた現場リポートである。日本の書評業界が抱え