『週刊ダイヤモンド』 2011年5月14日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 886 藤原正彦氏が『日本人の誇り』(文春新書)で日本文明の価値を、欧米人が至高の価値とする「自由」や「個人」の尊重と対比させて、「秩序」や「和」に求め、こう書いた。 「(日本人は)自分のためより公のために尽すことのほうが美しいと思っていました。従って個人がいつも競い合い、激しく自己主張し、少しでも多くの金を得ようとする欧米人や中国人のような生き方は美しくない生き方であり、そんな社会より、人びとが徳を求めつつ穏やかな心で生きる平等な社会のほうが美しいと考えてきました」 「実はこの紐帯こそが、幕末から明治維新にかけて我が国を訪れ日本人を観察した欧米人が『貧しいけど、幸せそう』と一様に驚いた、稀有の現象の正体だったのです。日本人にとって、金とか地位とか名声より、家や近隣や仲間などとのつながりこそが、精神の