冒険小説と言えばまず何と言っても、アリステア・マクリーンです。デビュー作のオンボロ巡洋艦の奮戦を描いた『女王陛下のユリシーズ号』は冒険小説と言うよりは戦争小説ですが、『ナヴァロンの要塞』、『北極基地/潜行作戦』、『黄金のランデヴー』、『恐怖の関門』、『荒鷲の要塞』など、冒険小説の名作中の名作がずらずらと並んでいます。 マクリーンの作品は冒頭から息をもつかせないクライマックスの連続で、二重三重のどんでん返しに謎解きの面白さを絡めたストーリー展開が魅力になっています。ただ、初期の作品はどれをとっても面白いですが、後期になると薄っぺらく退屈な作品ばかりになってしまいます。 このマクリーンと並ぶ冒険小説界の大御所がハモンド・イネスです。冒険小説はこの2人によって切り開かれたと言って良く、そのため彼らに連なる系譜の作家たちを「イネス・マクリーン・スクール」と呼んだりします。イネスの作品の特徴はその圧